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2025年度施政方針



 令和7年3月定例会開会にあたりまして、市政運営の基本的方針と新年度に取り組む主な施策の概要をご説明いたします。

 それでは、本定例会にあたり、令和6年度の市政に対する所信を述べさせていただきます。




はじめに



 令和5年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症となってから1年9か月が経過し、行動制限のある生活から、私ども行政も市民もコロナ禍前の日常を徐々に取り戻してきております。しかしながら、不透明な世界情勢を背景としたエネルギーや食料品等の価格高騰が続いていることもあり、市民生活や市内事業者の経営環境には依然として厳しさがございます。そうした状況を踏まえ、本年1月の補正予算においても、国の物価高騰対応地方創生臨時交付金を活用し、低所得世帯へ給付金を給付するとともに、事業者や農業者、公共交通事業者、福祉施設への支援なども行ってきたところですが、本市におきましても、歳入においては市税の増が見込まれるものの、歳出においては物価高騰や労務費の増加による事業費の増のほか、社会保障費や都市基盤整備費等の増加が見込まれ、財政状況は厳しさを増しております。 しかし、そうした中においても、「市民一人ひとりの幸福実感の向上」という吉川市の理念実現に向け、市民の皆さまと行政との「共動」を前提とし、「取捨選択・チャレンジ・スピード感」という基本的姿勢のもと、各事業の理念を踏まえつつ、着実に「まちづくり」の取り組みを進めてゆくことができるよう、一般会計は285億5,900万円、特別会計総額は181億1,262万5千円、企業会計総額は56億8,695万3千円の令和7年度当初予算案を編成いたしました。

 それでは、「幸せつながる みんなのまち よしかわ」を将来都市像とする「第6次総合振興計画・前期基本計画」の4つの重点テーマに沿って、令和7年度の市政運営、主要施策についてご説明させていただきます。



重点テーマ1「命を守る」



 重点テーマの1つ目は「命を守る」でございます。 近年、日本各地において、地震や水害による被害が毎年のように報告されています。 昨年は、元日に石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震が突如として発生し、多くの人命や家屋、ライフラインへの甚大な被害が生じたほか、8月には、日向灘を震源とする地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されました。 時と場所を選ばず、容赦なく私たちの生活に襲い掛かる自然災害の猛威と恐ろしさを改めて認識するとともに、本市においても、必ず大きな災害が発生するという前提のもとでの災害対策準備を改めて強く意識しております。

 そうした中、まず、「みんなで備える防災・減災の推進」についてでございますが、令和6年度は、能登半島地震の被災地に派遣した職員の経験を踏まえ、段ボールベッドを購入いたしました。令和7年度は、ライフラインの停止により、水が使えない状況であっても、避難所における衛生的なトイレ環境を維持するため、熱圧着により、排泄物を1回毎に密封することができるトイレ設備を導入するほか、アルファ米以外の備蓄食料として、栄養価の高いリゾットやスープなども新たに備蓄してまいります。 また、私はこれまで、「自然災害は、人知を超えたものであり、行政だけではすべての市民の命を救うことはできない」ということを、繰り返し、市民の皆さまにしっかりと伝え、「減災力の向上」を目指して様々な取り組みを進めてまいりました。「減災プロジェクト」はその取り組みの一つであり、これまで、自治会や自主防災組織、外国人や女性、そして中学生や要支援者などに参加をいただきながら、地震と水害を想定した避難所の開設や、ブラックアウトを想定した中での資機材の組立など、市民が主体となった訓練を実施してまいりました。令和7年度は、中央中学校を会場として、市民が避難所の居住スペースのレイアウトを考えながら、避難者を受け入れ、パーテーションやベッド、トイレなどの資機材を早期に設置することができるように、事前のHUG訓練などを通じて、地域の減災力の向上を図ってまいります。 今後も、災害の発生に備え、自主的に避難所開設などの訓練を実施する地域や、越谷市増林地区センターで3月に行われる総合防災訓練に参加する須賀・榎戸地区への支援を行うほか、2月に図上訓練を実施した協定締結企業をはじめ、自衛隊や警察、消防などの関係機関に市が主催する訓練への参加を呼びかけるなど、市民や事業者、関係機関との連携強化を図るとともに、市においても、災害対策本部や水害対策活動室の図上訓練を行うなど、引き続き、危機管理体制の充実に努めてまいります。

 令和7年1月28日に、八潮市内で下水道管の破損が原因と思われる大規模な道路陥没事故が発生し、転落したトラックの救助活動や復旧作業は困難を極め、約120万人の市民生活に影響を及ぼしました。 下水道は、人々の生活環境の向上に欠かせない大事な役割を担っているが故に、ひとたび事が起きれば、市民生活や社会活動に大きな影響を与えてしまう施設であると、改めて痛感をしたところでございます。 このことを踏まえ、施設の維持管理にもより一層目を配り、安全安心な下水道事業の役割を果たしてまいります。また、令和7年度においては、下水道事業及び農業集落排水事業を効率的かつ計画的に行ってゆくため、中長期的な視点で事業経営することを目的とする「下水道事業及び農業集落排水事業経営戦略」の改定作業を進め、将来的な投資計画や財政計画を精査したうえで、持続可能な事業運営に取り組んでまいります。

 「災害に強い都市の整備」における「治水対策」については、令和6年度内に、県と協議を進めてきた共保雨水ポンプ場の増強に向けた下水道事業計画の変更が完了することから、令和7年度は次のステップとして、ポンプ場の改築や雨水管の布設替えの設計作業に取り組むとともに、吉川美南駅東口周辺地区を流れる上第二大場川の護岸工事や老朽化した大型エンジンポンプ車の更新を進めるなど、引き続き、治水対策に取り組んでまいります。 また、国が整備を進めている江戸川河川防災ステーション内に設置する「水防センター」については、国の工事進捗に合わせた整備を進めてまいります。

 「水道事業」については、災害への備えや「施設更新計画」に基づき、老朽化が進んでいる水道施設更新を進めるため、市民生活への影響に配慮しながら令和6年度中に料金改定を実施いたしました。令和7年度においては、「持続可能で強靭な信頼される水道」を進めるため水道ビジョン(経営戦略)の見直しを行うとともに、会野谷浄水場内の送水管の更新や、吉川駅南側周辺地区では石綿管から災害に強い耐震管への布設替えのインフラ整備などを行ってまいります。

 「生涯を通じた健康づくりの推進」については、帯状疱疹ワクチン接種が定期接種として位置づけられることを踏まえ、国の動向を注視しつつ、実施体制構築に努めてまいります。



重点テーマ2「子どもの笑顔を未来につなぐ」



 重点テーマの2つ目は「子どもの笑顔を未来につなぐ」でございます。 まず、「妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援」については、子供を安心して生み育てられ、子供達が希望を持って健やかに成長できるよう、すべての妊産婦、子育て世帯、子供に対し、母子保健や児童福祉の幅広い観点から一体的に相談支援を行う「こども家庭センター」を新たに設置してまいります。これにより、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を進めるとともに、新たに「子育て世帯訪問支援事業」も開始するなど、配慮が必要な子供やその家庭に対するきめ細かな対応に取り組み、伴走型相談支援の更なる充実を図ってまいります。

 「安心して子育てできる環境の充実」については、これまでの「吉川市子ども・子育て支援事業計画」と「吉川市子どもの貧困対策推進計画」とを一体化し、新たに、令和7年度を初年度とする「吉川市こども計画」をスタートさせ、その基本理念を「すべてのこどもが個人として尊重され、こども自身が幸せを実感できる」として、地域全体で子育て家庭を支える意識の醸成や体制づくりなど各種子供施策を展開してまいります。

 「保育」については、保育を必要とするすべての子供や家庭が安心して良質な保育を受けられるよう、保育士などへの研修会や情報交換会を充実させるとともに、私立認可保育園協議会とも連携を図りながら、保育の質の向上に取り組んでまいります。また、園外活動等における子供の安全を確保するために、引き続きキッズゾーンを設定し、注意喚起を促すための路面表示や看板の設置を進めてまいります。さらに、保護者の育児負担の軽減や保育者との関わりによる子供の新たな気付きなど、保護者と子供の関係性に良い効果が期待されている「こども誰でも通園制度」の実施に向けた準備も進めてまいります。

 「未来を切り拓く力を培う学校教育の充実」については、吉川市教育大綱「家族を郷土を愛し 志を立て 凛として生きてゆく」の実現に向け、ICTなどを有効活用し、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実により、子供達の生きる力を育んでまいります。 令和6年度から南中学校に試行的に設置した校内スペシャルサポートルームについては、生徒の活用状況、授業や部活動との連携、教員との関わり等において良好な成果が得られていることから、令和7年度においては、中央中学校にも開設し、不登校支援の更なる拡充を図ってまいります。 子供達の学びを支える学習環境の整備については、令和6年度に引き続き、体育館空調設備整備工事を行うとともに、中曽根小学校体育館の長寿命化改修工事を実施してまいります。  また、旭小学校については、総合的な学習の時間での子供達の発案を元に、校庭にアスレチック遊具を整備いたします。吉川市の未来を担う子供達が自ら議論し考えたアイディアを実現することで、まちづくりへの参画意識や郷土愛の醸成を図るとともに、子供達の自己肯定感や達成感の向上、旭小学校を中心とした地域の魅力を高めてまいります。

 「若者支援」については、引き続き、市社会福祉協議会とタイアップした大学受験料のサポートや義務教育後の若者に対するフリースクール等の利用料の助成に取り組むとともに、「若者支援の在り方検討会議」での方向性を踏まえ、新たに若者の資格取得へのチャレンジを応援する助成事業を実施してまいります。  また、「価値ある未来」をつくってゆくためには、若い世代の多様な意見を市政に反映することが重要であり、これまで数多くの子供や若者と接する中で、その意見やアイディアをまちづくりに反映してまいりました。そのような中、若者が市政に関する意見交換や議論をする「よしかわ若者会議」においても様々な意見や提案があり、令和6年度には「よしかわ若者会議」のメンバーをはじめとする市民や市内事業者等との共動による「キャンプフェス」の実現に至ったところでございます。 令和7年度についても、様々な意見聴取の方法により、未来を担う若者の市政への関心を高めるとともに、令和8年度に控える市制施行30周年事業をはじめ、まちづくりに若者の意見を反映できるよう取り組んでまいります。



重点テーマ3「誰もが輝くまちをみんなで創る」



 まず、「共に支え合う地域福祉の推進」については、これまで移行準備を進めてきた「重層的支援体制整備事業」を本格実施するとともに、この事業の一部であるアウトリーチ・継続的支援事業及び参加支援事業を委託する市社会福祉協議会をはじめ、関係機関と連携を図り、複雑化・複合化する生活課題への包括的支援に取り組んでまいります。  また、生活に困窮する世帯の方々への自立相談支援を引き続き実施するとともに、中高生だけではなく小学3年生まで対象を広げた「子どもの学習支援事業」を継続し、様々な面から子供達の支援に取り組んでまいります。

 「いきいき暮らせる高齢者福祉の推進」については、「高齢者が幸福を実感し、すべてのひとが生涯にわたり居場所と役割を持ち活躍する地域」を理想像とする、「第9期吉川市高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、介護予防・日常生活支援総合事業の実施や住民相互の助け合いに取り組む団体への支援などにより地域包括ケアシステムの推進を図るとともに、地域型介護予防教室、運動教室などを通じて高齢者の健康への意識の高揚、健康寿命延伸を図ってまいります。  また、高齢者の活動の場である老人福祉センターについては、令和7年度で指定管理の期間が終了することから、令和8年度以降の指定管理者の公募を行ってまいります。

 「互いに尊重し合う障がい福祉の推進」については、「第3期障がい者の地域での生活を考える検討会議」において、障害者の新たな就労スタイルの構築に向けてこれまで議論を進めていただきました。令和7年度については、当検討会議からの提言を具現化するため、基金を活用し、障害者の方々が地域の中で更に活躍できる場所づくりを目指して支援を進めてまいります。また、情報コミュニケーションに困難を抱えた障害者のため、災害時などに使用できるコミュニケーション支援用のバンダナを作成し、避難時の行動を支援するとともに、令和6年度に初めて開催した高齢者、障害者、保育の福祉関連施設のスタッフ採用を支援するための「就職面接・相談会」を、令和7年度は開催回数を増やし、引き続き市内の福祉人材の確保を支援してまいります。  そして、「文化芸術による幸福実感あふれるまちづくり」の基本理念のもと、総合政策の一環として取り組んでいる「障がい者アート展」では、引き続き発表と表彰の機会を設け、「多様性を認め合い、誰もが活躍できる社会、誰もが幸福を実感できるまち」を目指してまいります。

 「多様性を認め合う社会づくりとジェンダー平等の推進」については、「よしかわパートナーシップアクション」の基本理念である「多様性を認め合い、誰もが自分らしく生きることができるまち」を目指し、市民一人ひとりがそれぞれの個性や能力を十分に発揮できるよう、令和7年度は「女性と文化・芸術」をテーマとして啓発に取り組んでまいります。

 「人権に関する理解の促進」については、関係法令や指針に基づき国や県との連携を図りながら、教育及び啓発を中心とした取り組みを進めてゆくとともに、より多くの市民に人権について関心を持っていただくことを目的とした「人権講演会」を開催するなど、独自の事業を実施してまいります。

 「平和意識の高揚」については、平和都市宣言の理念を踏まえ、戦争の悲惨さと平和の尊さを若い世代の方にも考えていただけるよう、文化芸術の要素を取り入れた「平和のつどい」や「平和バスツアー」を引き続き実施し、平和で豊かな社会を次の世代に引き継いでまいります。

 「コミュニティ活動と市民参画・協働の推進」については、地域住民相互の連帯感と自治意識の高揚を図ることを目的として、令和4年8月に設立した「まちづくり協議会」による減災事業を継続して支援するとともに、自治連合会との協働事業である「地域課題を地域で解決するための勉強会」においては、自治会等が地域で抱えている個別の課題を取り上げ、その解決策を見出してゆけるような取り組みに移行し、地域活動を支援してまいります。また、令和6年度に実施した、大学生の意見も取り入れた「流通経済大学との共同研究」の成果を自治会活性化に活かしてまいります。  また、毎年、市民の自由な発想で政策提言をいただく「市民シンクタンク」や、令和6年度においては、障害のある方の兄弟姉妹にスポットを当てた支援、不登校や引きこもり支援、地域の減災活動、シニアが広く交流する場の提供といった団体の皆さまが助成金を活用くださった「みらいステップアップ助成金」の取り組みを更に推進することで「市民と行政の共動」を進め、「市民の幸福実感」のより一層の向上を目指してまいります。



重点テーマ4「価値を高め、次世代に継承する」



 重点テーマの4つ目は「価値を高め、次世代に継承する」でございます。 まず、「文化芸術でつながるまちづくり」については、コロナ禍から回復していく中で、文化活動においても市民文化祭をはじめとする様々な成果発表が行われるようになり、中央公民館や市民交流センターおあしすにおいても活気と交流が戻ってまいりました。  そうした中、令和6年度に、応募数が過去最多の1,141作品となるなど、市の文藝活動の振興に大きな役割を果たしている「文藝よしかわ」については、令和7年度は節目となる第10号の刊行に向けて募集・編集に取り組んでまいります。  また、良質なクラシックの生演奏に触れる機会を創出する「生音コンサート」では、ヴァイオリン奏者の石上真由子氏をお招きして、ヴァイオリンの仕組みや奏法の紹介とともに、楽器としての魅力を中央公民館ホールにおけるコンサートと小学校におけるアクティビティにより伝えていただきます。  「演劇プロジェクト公演」では、令和6年度は「吉川むかしばなし」をモチーフにした「はじめのまつり~そこに喜三郎あり~」を上演しました。多様な市民キャストがプロの俳優と融合してつくりあげた舞台は、新たに歌唱にも挑戦した意欲的な作品となり、その中で地元消防団が消防団員役としてゲスト出演し、活動のPRを兼ねた場面などもあり、地域課題の解決にも貢献する内容と好評を博しました。令和7年度についてもオリジナル脚本による舞台公演などにより、観劇と演じる機会を創出することで文化芸術の振興を図ってまいります。

   市の「歴史文化」に触れることは、郷土愛を育み、将来にわたって、わがまちに愛着を持ち続けるきっかけとなるとともに、例えば「自然災害伝承碑」などを市民の皆さまに広くご覧いただくことで減災意識の向上が図られるなど、まちづくりの力ともなっております。 そうした中、令和7年度は、吉川橋の架け替えに伴う道路拡幅により、延命寺が所有する市指定文化財4基の板碑が移設されたことから、あらためて解説板を作成し設置することにより、文化財の周知と活用を図ってまいります。 また、これまで市内各地を訪ね、地域の歴史や文化財に触れてきた「文化財めぐり」については、千葉県野田市及び流山市まで足を延ばし、周辺地域から見た本市の産業やまちの発展について学ぶ機会を設けてまいります。

 吉川市の歴史、食文化の象徴である「なまず」を用いた取り組みについては、令和6年度は、「全国なまずサミット2023 inよしかわ」の「なまず料理アイディアレシピ」で入賞した「なまずドッグ」を市内小中学校の給食で提供したほか、民間事業者との連携により、吉川美南駅に新たに「なまずモニュメント」を設置しました。また、三輪野江地区では地元企業により「なまずのぼり」が空高く舞い上がるなど、なまずを活用した取り組みが拡がりをみせております。令和7年度は、広島県神石高原町で開催される「全国なまずサミット」に参加し、他の自治体、団体等との連携の中で、全国に「なまずの里よしかわ」を広く発信するとともに、引き続き、吉川産なまずの流通を高めるための市内事業者への補助をはじめ、なまずを用いた学習やなまずの日献立を実施するほか、民間事業者との連携を図り、「なまず」をキーワードにした各種イベントの開催やものづくり体験などを通じて、なまず文化や郷土の歴史への理解、郷土愛の醸成に努めてまいります。

 「魅力ある農業の振興」については、下八間堀悪水路の改修、しんきぼりの整備等の農業生産基盤となる用排水路の整備や修繕を継続して進めてまいります。 また、将来の農業経営に意欲がある認定農業者を対象とした補助金については、農作業の効率化や農業の経営管理の合理化等による農業の生産性の向上を図ることを目的に、令和6年度に市内において被害が拡大したイネカメムシの広域防除を行うための農業用ドローンの購入をはじめ、スマート農業の推進に関する支援メニューを新たに追加し支援を行ってまいります。

 「農業拠点施設整備」については、次世代の視点を取り入れた都市近郊農業の確立や、新たな農業拠点づくりなどを目指す「吉川市農業パーク基本構想」の実現に向け、三輪野江地区における新しい農業の振興を図るため、地権者や関係機関等と調整を行い、事業者参入を進めてまいります。

 「賑わいある商業・活力ある工業の振興」については、経済活動が回復し、雇用環境の改善や緩やかな景気の持ち直しが見られる一方で、エネルギー等の価格高騰が事業継続に影響を与えていることから、原油等価格高騰対策支援金により事業者を支援したほか、人材確保に向けた支援策等を展開してまいりました。また、「産業振興基本条例」に基づき、ふるさと納税や「産業フェア」等を通じて事業者の魅力を発信するなど、「事業者、勤労者、市民、行政の共動による吉川市全体の幸福実感向上を目指した産業振興」を推進してまいりました。令和7年度は、引き続き、高校生の職場見学や就職説明会、就労支援相談等を実施し、人材確保や就労機会の創出、雇用安定の支援に努めてまいります。また、市内事業者等により構成される産業振興会議での意見を踏まえ、事業者と連携した魅力発信として、未来を担う子供達から事業者まで広く関心を寄せていただけるように「企業ガイドブック」を刷新し、事業者間の更なる連携強化の推進や優れた技術力を市内外へ広く発信することで、市内産業の振興を図ってまいります。

 「産業地整備の推進」については、三輪野江南部地区において、開発事業で最も重要となる、地権者の皆さまの「民間事業者による開発」というご意向を踏まえ、引き続き、民間事業者からの相談や提案などを受けながら、市のまちづくりの方向性に沿った、当該地域のみならず、本市全体の発展に寄与する開発を目指し、関係機関との調整を行ってまいります。

 「吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業」については、まちづくりのコンセプトである「笑顔と緑あふれるみんなの庭」の実現に向け、地権者の皆さまのご理解とご協力をいただきながら、宅地の造成や都市基盤の整備を順調に進めております。  令和6年度には、バリアフリーに対応した駅前広場が完成し、駅利用者の利便性や安全性が大幅に向上したほか、近隣公園北側の住宅ゾーンと沿道サービスゾーンの一部では、使用収益を開始したところでございますので、今後、住宅などの建築も始まり、地区内での人口が増加していくものと考えております。  令和7年度も、引き続き、1号調整池の修景施設工事などの公共施設の整備を進めるとともに、順次、区画道路や供給処理施設の整備を進め、住宅ゾーンなどの使用収益の開始エリアを拡大してまいります。また、商業・業務ゾーンの画地番号①では、市の新たな玄関口として、魅力ある施設の立地を目指し、事業者募集の実施に向けて、取り組んでまいります。 そのような中で、「吉川美南駅東口駅前の文化芸術関連施設を中心とした公共施設整備」については、吉川美南駅前公共施設整備基本構想・基本計画に基づき、民間活力を最大限に活用し、本市の価値を高め、新たな魅力のある文化芸術活動拠点の創出を目指し、引き続き民間事業者との意見交換や最適な事業手法の検討を進めながら、事業者募集に向けた準備等に取り組んでまいります。

 「環境にやさしいまちづくり」については、令和3年4月に2050年の二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、埼玉県東南部地域の5市1町でゼロカーボンシティを共同で宣言して以降、市庁舎や小中学校において、順次再生可能エネルギー100%電力を導入してまいりました。令和7年度は、新たに給食センターと環境センターにおいて再生可能エネルギー100%電力を実現するとともに、環境センターにおいては、東埼玉資源環境組合の廃棄物発電による電力とすることにより、電力の地産地消にも配慮してまいります。また、環境保全指針にあります「省エネルギーの推進」「再生可能エネルギーの活用」に引き続き取り組むほか、令和6年度の国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用した省エネ家電への買い替え支援を行ってまいります。今後につきましても、ゼロカーボン実現に向け、市民・事業者と連携し、「経済性」を考慮しながら「環境負荷の低減」を推進してまいります。

 「資源循環型社会の推進」については、東埼玉資源環境組合にて第一工場ごみ処理施設のプラント更新事業を進めており、資源循環型社会の構築に向け、プラスチック分別収集及びごみ処理の有料化について引き続き検討してまいります。

 「自然環境の保全」については、自然観察会や市内各小学校での環境学習にて、身近な自然の現状と自然環境保全の必要性を啓発してまいります。また、市民が水と親しむことができる機会として、令和6年度は「市民まつり」と同日に吉川調節池ウェットランドにおいて「川まつり」を開催し、多くの方にご参加いただきました。令和7年度も引き続き、親水イベントを開催してまいります。

以上が重点テーマとなります。続いて、その他の主要施策を説明させていただきます。



その他の主要施策


「スポーツ施設の整備」

 「分散型スポーツ施設の整備」については、東埼玉資源環境組合第二最終処分場における、多目的グラウンドやテニスコートの整備に係る具体的な協議を東埼玉資源環境組合との間で進めるとともに、吉川美南駅東口周辺地区内の1号調整池については、平時において様々なスポーツを楽しめる場として、多目的グラウンド等を整備してまいります。併せて屋外市民プール跡地の活用も検討してまいります。 総合体育館の改修については、長寿命化改修工事と併せて空調機の設置やフットサルの利用が可能となる設備の整備など、改修の機会を捉えて機能向上を図りました。引き続き、市民が身近な場所で気軽にスポーツに親しめる環境を整えてまいります。



「防犯等」

 「防犯体制」については、街頭防犯カメラの設置及び運用に関する基本方針に基づき、市民の皆さまが安心して生活できるよう、駅前に街頭防犯カメラを設置してまいりましたが、令和7年度は、新たに吉川美南駅東口に防犯カメラを設置し、犯罪の防止や治安の向上に努めてまいります。 また、吉川市犯罪被害者等支援条例を制定し、犯罪被害者等が置かれている状況や支援の必要性などについて、市民や事業者等の理解を深めるとともに、関係機関と連携して、犯罪被害者等に寄り添った支援に努めてまいります。



「道路等の整備」

 まちづくりの根幹となる「道路整備」のうち、「都市計画道路」については、令和6年度に越谷吉川線において、吉川橋を含む本市内全線の4車線供用が開始され、長年の課題であった交通渋滞の緩和が図れたものと考えております。引き続き、「三郷流山線」も含めて、関係機関と連携を図りながら、事業を進めてまいります。 「越谷総合公園川藤線」は、三郷吉川線までの未整備区間における用地交渉を引き続き行うとともに、新川橋から東埼玉道路までの区間において、令和6年度に実施した測量調査を踏まえた予備設計に着手してまいります。  また、市民の皆さまにとって身近な道路や橋りょうについては、安全に通行できるように令和6年度の路面状況の調査結果を踏まえた補修計画による路面の補修や、長寿命化計画に基づく橋の補修の設計などにより、適正な維持管理に努めるとともに、道路の利便性や安全性の向上を図るため、道路改良のための測量や設計のほか、「江戸川堤防沿い」の安全対策にも取り組んでまいります。 さらに、令和5年度から取り組んでまいりました「旭・三輪野江地区の生活道路の整備」については、令和6年度に各自治連合会において道路整備の優先順位を決定していただき、優先順位に基づく整備を行ってまいりました。引き続き、地域の要望に沿った整備を進めてまいります。

 「吉川駅北口駅前広場」の改修工事については、利用する皆さまのご協力のもと、令和6年度に交通島などの既存施設の撤去工事を行ってまいりました。令和7年度は、引き続き、北口駅前ロータリーを利用する皆さまへの影響をできる限り抑えながら、シェルターや歩道、照明などの新たな施設の整備に着手してまいります。



 「公園等の整備」

「公園等の整備」については、市民の皆さまが、より親しめ、憩える公園となるよう「公園再生プロジェクト」を展開しており、開設から30年以上が経過する公園を中心に、老朽化した遊具などを修繕または撤去し、公園の魅力が更に高まるよう、順次、新たな遊具や健康遊具の設置など再整備に取り組んでいるところでございます。 令和6年度は、遊具を撤去した保公園に新たな複合遊具を設置するとともに、吉川美南中央公園には、子供達のアイディアを聴き、障害の有無などに関わらず、すべての子供達が分け隔てなく、共に憩い遊ぶことができるインクルーシブ遊具の設置を進めており、本年度中に完成を予定しているところでございます。令和7年度も、引き続き、老朽化した遊具や休憩施設の修繕等を行うとともに、老朽化により遊具を撤去した木売公園に複合遊具などの設置を進めてまいります。また、吉川美南駅東口周辺地区においては、順次、子供達のアイディアを活かした遊具などを設置した街区公園の整備に着手してまいります。

 「三輪野江地内の大沢雄一元埼玉県知事の居宅跡地の整備」については、市長キャラバンなどを通じていただいた、子供達をはじめとする市民の皆さまからのご意見と、土地所有者のご意向を踏まえ、「自然を身近に感じる地域の憩い場」「自然と触れ合える環境教育の場」「自然を生かした子ども向けの公園」をコンセプトとして、令和6年度から、土地の整地や安全柵の設置などの工事に着手し、本年度中に一部供用開始を予定しているところでございます。令和7年度は、引き続き、全面供用開始に向けて、園路と遊具の整備や大沢雄一元埼玉県知事を顕彰する看板の設置をしてまいります。



「地域公共交通」

 「地域公共交通」については、令和6年度は、喫緊の課題に対応するため、運転手確保の支援や、バス路線の新設に取り組む一方、市民や有識者、交通事業者などに参画いただいている「吉川市地域公共交通協議会」において、将来の地域公共交通のあるべき姿を示す「地域公共交通計画」の策定のための議論をしていただいており、令和7年度中に計画を策定してまいります。  私自身も、協議会に同席し、様々なご意見を伺う中で、交通事業者の現状や市民の移動ニーズを捉えると、これまでの交通事業者や行政による公共交通だけでは、持続的にに市民の移動を支えることは困難であり、交通事業者が担う幹となる交通サービスを支えながら、その枝葉となる部分については、地域や各種団体等が主体となった移動サービスの検討も進める必要があると感じているところでございます。  このようなことから、全国的に「公共ライドシェア」や「地域での助け合いによる移動サービス」が展開されつつある状況も踏まえ、令和7年度においては、まずは、公共交通を取り巻く現状や市の移動サービスの現状などを市民や多くの関係者の方々と共有するため、地域公共交通に関するシンポジウムを開催し、地域の声を伺いながら、市と地域・企業・団体で共動できる移動サービスなどの可能性について探ってまいります。



「行財政運営」  「行財政運営」における「組織体制と人事管理」については、変化する行政需要に的確に対応するため、国の人材育成・確保基本方針を踏まえた吉川市人材育成基本方針の見直しを図るとともに、研修による職員の資質と能力の向上を図りながら、試験日程の多様化など様々な採用試験を実施することで人材育成、人材の確保に努めてまいります。

 「市税等の徴収」については、「適正な課税」のもと、現年度課税分の徴収に重点を置き、納税者に寄り添った納税相談や適切な滞納整理に取り組み、99パーセントを超える収納率を確保しております。令和7年度においても、引き続き、「丁寧かつ公平な徴収」の取り組みを進め、市税滞納額の縮減に努めるとともに、給食費や保育料など税外債権についても、関係各課で横の連携を図りながら、市民負担の公平性確保に努めてまいります。また、口座振替やコンビニ納付、スマートフォンを使用した納付の普及促進を図り、更なる納付環境の向上に努めてまいります。

 「公有財産管理」については、「吉川市公共施設長寿命化計画」に基づき、令和7年度については、中曽根小学校体育館について屋根・外壁の改修、多目的トイレ設置などの長寿命化改修工事と併せて空調機の設置を実施してまいります。また、公共施設や公有地の適正管理については、専門家による施設の劣化調査の結果や財政の平準化を踏まえ、吉川市公共施設長寿命化計画の改定を行うとともに旧庁舎跡地を含めた公有地の有効活用などに努めてまいります。

 「デジタル・トランスフォーメーションの推進」については、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化社会を目指す」という理念のもと、デジタル技術を活用し、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるための「吉川市デジタル・トランスフォーメーション推進計画」に基づき、これまでに、WEB会議システムやAI会議録作成システムなどの導入により業務の効率化を図ったほか、高齢者向けスマホ教室、コンビニ交付サービスに対応したマルチコピー機による「書かない窓口」や窓口の混雑状況などをスマートフォンで確認できる「待たない窓口」の導入など、人にやさしい施策にも取り組んでまいりました。 令和7年度もそうした事業推進を継続し、「自治体情報システムの標準化」や「デジタル人材の育成」など、行政DXの推進にも取り組みながら、さらなる市民の利便性向上を目指し、人に優しいデジタル化社会を目指してまいります。

以上が令和7年度の主要施策となります。



(むすびに)

 先日、2月8日、越谷吉川線の中井工区の完成記念式典を開催し、地権者の皆さま、地域の皆さま、工事等関係者の皆さま、そして市議会議員の皆さまと共に、テープカットや中吉橋の渡り初めを行いました。越谷吉川線の計画決定は昭和45年。実に55年の歳月を費やし、完成の日を迎えました。また、中央土地区画整理事業の完成記念式典も2月にあり、28年続いた事業の終わりを迎えることとなりました。 いずれの事業も、地権者、行政、工事、そして地域と、様々な分野における皆さまの長きに渡ってのご尽力、ご協力があってのものであり、それらが今の吉川市の発展の礎となり、さらに次の吉川市に向けた「未来へのバトン」となってゆくのだと、改めて、先人への敬意と感謝の思いを強く抱いた次第です。 そうした意味においても、先人からバトンとして受け取った「吉川駅北口」をリニューアルし、また、新たに取り組み、ここまで順調に進んできている「吉川美南駅東口」の整備を更に前進させることは、過去と今と未来を結びつけるという、「まちづくり」の本質を具現化する象徴的な事業として重要であると、改めて感じております。

 また、そうした目に見える整備事業以外の、市民一人ひとりの思いや課題に向き合う事業においても、「過去と今と未来を結びつけるまちづくり」という思いを持ちながら、「幸福実感の向上」、「持続可能」という吉川市のまちづくりの理念のもと、引き続き、丁寧に、そして全力で取り組んでまいります。

 そして、その際には、これまで通り、市民の皆さまから広くご意見、アイディアをいただき、「市民と行政との共動によるまちづくり」を更に進め、その過程がまた、市民の皆さまが市の魅力を再認識し、市への愛着を持つキッカケとなる、そのような好循環を生み出したい、そう考えております。

 今後、吉川美南駅東口のまちづくりの進展により、吉川市の人口はまだまだ増加してまいります。しかし、その後には本市も本格的な人口減少の段階を迎えることとなります。だからこそ、今から、市としてのあり方を見つめ直し、「人口減時代に向けた、吉川市としての新たな思考、体制、施策の方向性」を示してゆかなければなりません。

 来年、令和8年度、吉川市は市制施行30周年の節目の年を迎えます。そこへ向かう中で、市民の皆さまと共に、そうした新たな方向性を打ち立て、「価値ある未来」に続く一年となるよう、全職員と共に、令和7年度の施策全てに力を尽くすことをお約束申し上げ、施政方針といたします。



令和7年2月25日 
吉川市長 中原恵人


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