2024年度施政方針
まず、はじめに令和6年元日に発生した能登半島地震により、亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、ご遺族や被災された方々に心からお見舞い申し上げます。地震発生後、本市においても職員派遣や物資の支援を行ってまいりましたが、いまだ避難を余儀なくされている方も多く、復興復旧が速やかに進むことを心から願っております。
それでは、本定例会にあたり、令和6年度の市政に対する所信を述べさせていただきます。
はじめに
2019年12月、中国武漢で発生し、世界中で猛威をふるった新型コロナウイルス感染症により、私達は、身体においてはもちろん、経済活動にも大きな影響を受けました。そうした中、本市においては、「生命を守る」、「生活を支える」、「地域経済を後押しする」という3大理念の下、医療体制の確保やワクチン接種、生活者や事業者への支援など国・県と一体となって対策を展開し、大きな難局を乗り越えてきたところでございます。 また同時に、ウクライナ、中東地域をめぐる情勢や円安などに起因するエネルギー・食料品価格等の物価高騰による、市民生活や事業者の経営における大きな影響に対しても、生活困窮者世帯や子育て世帯への支援をはじめ、福祉施設や市内農商工業者等への補助事業など迅速に取り組みを進めてまいりました。
このような中、令和6年度当初予算においては、市民と行政との共動により、「幸福実感があり、持続可能な未来」である「価値ある未来」を創り出すという不変のテーマに向け、「総合振興計画」、「総合戦略」をはじめとする各計画やそれぞれの分野における「理念」を踏まえながら、「取捨選択・チャレンジ・スピード」という基本的姿勢の下、地域・市民に対して細やかに気を配り、共動の中で、丁寧に事業を進めてゆくことができるよう予算編成を行い、また、物価高騰や賃上げに伴う労務費の上昇などの社会経済状況による事業費増加の可能性にも注視しながら事業効果や費用の精査も行い、一般会計は277億7800万円、特別会計総額は160億8770万4千円、企業会計総額は53億8010万4千円の予算案としました。
それでは、「幸せつながる みんなのまち よしかわ」を将来都市像とする「第6次総合振興計画・前期基本計画」の4つの重点テーマに沿って、令和6年度の市政運営、主要施策についてご説明させていただきます。
重点テーマ1「命を守る」
重点テーマの1つ目は「命を守る」でございます。
近年、日本各地では、大雨による河川の氾濫や地震による自然災害が頻発しています。
本市においては、令和5年6月に台風2号と梅雨前線の影響による大雨により、中川と新方川が氾濫危険水位に達し、沿川住民への避難指示を発令したほか、家屋への浸水被害などが発生しました。
また、冒頭申し上げました、元日に発生した「能登半島地震」では、最大震度7の地震が突如として襲い、多くの尊い命が奪われたほか、家屋やライフラインの被害が甚大であり、自然災害は時と場所を選ばず、いつでも起こり得ることを、改めて認識し、緊張感を持ったところでございます。
そうした中、まず「みんなで備える防災・減災の推進」についてでございますが、私は、人智を超え、突如として発生する自然災害において、「行政だけではすべての市民の命を救うことはできない」という考えのもと、平時からの市民一人ひとりの災害に対する備えと日々の訓練などの積み重ねの重要性について、機会を捉えてお伝えしながら、「減災力の向上」を目指して様々な取り組みを進めてまいりました。
その一つである「減災プロジェクト」においては、水害や地震などを想定し、自主防災組織や自治会、外国人や女性、そして中学生や要配慮者などに参加をいただきながら、避難所の開設や資機材の組み立て訓練など、市民が主体となった実践的な訓練をこれまでに実施してまいりました。
令和6年度においては、「北谷小学校」を会場として、被災時に実際に起こり得る事象などを捉えながら、より実践的な「減災プロジェクト」を開催するとともに、各地区における出前講座などを通じ、地域における減災力の向上に取り組んでまいります。
また、市災害対策本部や水害対策活動室の図上訓練などの実施や、自衛隊や警察、消防など関係機関との連携強化を図り、引き続き、危機管理体制の充実に努めてまいります。
さらに、災害時における避難者の良好な生活空間を確保すること、並びに子供達の学びの場となる学校施設の環境を充実させるため、令和6年度から令和7年度にかけて、避難所となる小中学校12校の学校体育館と総合体育館に順次、空調設備を整備してまいります。
「災害に強い都市の整備」における「治水対策」については、吉川駅北口から県道川藤野田線までを範囲とする第一排水区内の浸水被害の軽減を図るための共保雨水ポンプ場増強において、本市が求めた流量が河川管理者に認められることとなったことから、下水道事業計画の変更について、埼玉県に協議の申入れを行ってまいります。同時に、老朽化した大型エンジンポンプ車の更新などのインフラ整備を行い、引き続き効果的な治水対策に取り組んでまいります。
また、国が整備を進めている江戸川河川防災ステーション内に設置する「水防センター」については、令和5年度に水防センター等整備検討委員会の皆さまからいただいたご意見を参考に、令和6年度は、水防センターに設ける機能や設備、平時の利活用等について、国との調整を図りながら、庁内で具体的な検討を進めてまいります。
「水道事業」については、能登半島地震により、日常生活における水道の重要性が改めて認識されているところです。安全安心な水道水の供給には、老朽化が進んでいる水道施設の「施設更新計画」に基づく更新が重要であり、そのために必要とする多額の更新費用をいかに縮減し確保するかについて、吉川市水道運営委員会の皆さまに検討をいただいてきましたが、この度、「持続可能で強靭な信頼される水道事業の実現には、適正な水準に向けた料金改定は必要」との答申をいただいたところでございます。
令和6年度においては、市民生活への影響に配慮しながら料金の改定を進めるとともに、吉川駅周辺地区における石綿管から災害に強い耐震管への布設替えのインフラ整備などを行ってまいります。また、多くの市民の皆さまに水道事業の現状や災害時対応等を理解していただけるようなイベントを実施してまいります。
「生涯を通じた健康づくりの推進」については、これまで3大理念に基づき、新型コロナウイルス感染症対策を進めてまいりましたが、令和5年5月には感染症法上の5類に位置付けられ、令和6年3月をもってワクチンの特例臨時接種が終了となることを踏まえ、国の動向を注視しつつ、定期予防接種としての実施体制構築に努めてまいります。
重点テーマ2「子どもの笑顔を未来につなぐ」
2つ目の重点テーマは「子どもの笑顔を未来につなぐ」であり、まず、「妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援」については、すべての妊婦、子育て世帯が安心して出産、子育てができるよう、子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点を中心とした、妊娠期から子育てまでの切れ目ない支援と伴走型相談支援の充実化を引き続き進めてまいります。さらに、「子ども医療費」については対象年齢を18歳までに拡大し、子供達の健やかな成長をバックアップしてまいります。
「安心して子育てできる環境の充実」については、「地域で子育てを支える体制づくり」として、吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業地内に「新たなこども一体拠点施設」の整備に向けた検討を進めてまいります。また、令和6年度が最終年度となる「第2期子ども・子育て支援事業計画」については、子育てに係るニーズ調査の結果をもとに、第3期計画を策定してまいります。
「保育」については、保育を必要とするすべての子供や家庭が安心して良質な保育を受けられるよう、外部有識者のアドバイスもいただきながら保育士などへの研修会や情報交換会を充実させてまいります。また、園外活動等における子供の安全を確保するために、キッズゾーンに設定し、注意喚起を促すための路面表示や看板の設置を進めてまいります。さらに、一時預かり事業の利用上限等の拡充や、吉川美南駅東口地区の土地区画整理事業の進捗に合わせた認可保育所整備に向けた準備など、保護者の育児負担の軽減や新たな保育需要に対応するための取り組みを進めてまいります。
「未来を切り拓く力を培う学校教育の充実」については、吉川市教育大綱「家族を 郷土を愛し 志を立て 凛として生きてゆく」の実現に向け、引き続き「学力・体力・非認知能力の育成」を図ることを理念に、小学校全学年における35人学級への移行を完了させるとともに、デジタルテクノロジーを使って学習、創造し、責任をもって社会へ参画する能力を育成するための「ICT教育」や、子供達が自ら課題を見つけ解決する能力を養うための「探究型学習(PBL)」を推進してまいります。
また、全国的に課題となっております不登校支援につきましては、学校と教育支援センターの中間的な居場所として、令和6年度に試行的に南中学校に校内スペシャルサポートルームを設置することで、自分のクラスに入りづらい生徒への学校生活支援効果を測ります。
「若者支援」については、経済的な理由から大学受験等を躊躇してしまう高校生などを応援するための、市社会福祉協議会とタイアップした大学受験料のサポート事業を引き続き実施するとともに、検討を重ねてきた、「不登校・ひきこもりなどの義務教育後の若者に対する支援」については、SNSを活用した支援情報の提供を継続し、加えて、「若者支援の在り方検討会議」を踏まえて、義務教育後の若者に対する「フリースクールの授業料等の助成事業」を試行的に実施してまいります。
重点テーマ3「誰もが輝くまちをみんなで創る」
3つ目の重点テーマは「誰もが輝くまちをみんなで創る」であり、互いの多様性を認め、それぞれの生き方や価値観を尊重し合い、誰もが自らの力を発揮できる、そうした社会の実現に向けた取り組みを進め、地域でのつながりや支え合いのもと、様々な主体と行政との共動によるまちづくりを推進してまいります。
まず、「共に支え合う地域福祉の推進」については、複雑化・複合化する生活課題への包括的支援を目指し、令和7年度を目途とした「重層的支援体制整備事業」実施への移行準備を引き続き進めてまいります。
そうした中、貧困の連鎖を防止することを目的に取り組んできた、中学生と高校生を対象とした「子どもの学習支援事業」については、新たに児童館において小学校3年生から6年生を対象とする事業も展開し、小学校時代に起きる学習面の躓きへの支援にも取り組んでまいります。
「いきいき暮らせる高齢者福祉の推進」については、「高齢者が幸福を実感し、すべてのひとが生涯にわたり居場所と役割を持ち活躍する地域」を理想像とする、3月策定予定の「第9期吉川市高齢者福祉計画・介護保険事業計画」に基づき、地域包括ケアシステムを推進するための介護予防・日常生活支援総合事業を継続して進め、そうした中で、公共交通を補う移動支援に取り組む団体への支援や地域型介護予防教室、運動教室を実施し、高齢者の健康への意識の高揚、健康寿命延伸を図ってまいります。
「互いに尊重し合う障がい福祉の推進」については、「第5次吉川市障がい者計画」の基本理念として掲げた「共生と社会参加の実現、地域生活の促進」を目指した取り組みを進める中、令和5年度に設置した「情報コミュニケーション支援会議」においては、令和6年度は、情報コミュニケーション支援に有効な方策等を当事者や支援団体の方々と検討してまいります。さらに、高齢者、障害者、保育などの福祉関連施設のスタッフ採用を支援するため、「就職相談会」を開催するとともに、引き続き、「ノブくんスマイル基金」を活用した障害者就労支援に取り組んでまいります。
また、「文化芸術による幸福実感あふれるまちづくり」の理念の下、総合政策の一環として取り組み、大変好評をいただいている「障がい者アート展」を引き続き開催し、「多様性を認め合い、誰もが活躍できる社会、誰もが幸福を実感できるまち」を目指してまいります。
「多様性を認め合う社会づくりとジェンダー平等の推進」については、「よしかわパートナーシップアクション」の基本理念である「多様性を認め合い、誰もが自分らしく生きることができるまち」を目指し、令和6年度は「女性と農業」をテーマとして啓発に取り組んでまいります。また、「性の多様性」については、「パートナーシップ宣誓制度」を拡充し、利用者の異動に伴う手続きの負担軽減を図るため、県内の自治体と連携を図るとともに、ファミリーシップ制度を導入することにより、性的指向または性自認に係る性的少数者の生きづらさや困難さの軽減に取り組んでまいります。
「平和意識の高揚」については、引き続き、平和都市宣言の理念を踏まえ、文化芸術の要素を取り入れた「平和のつどい」や「平和バスツアー」等、より多くの市民の皆さまと平和への思いを共有できるよう事業を実施してまいります。
また、「ウクライナ避難民の受け入れ」については、迅速に支援体制を整え、国に対し避難民の受け入れを表明してまいりましたが、これまでに避難民の受け入れに関する相談等がなかったことから、相談窓口は継続しつつ、その他の事業は一旦見直しをいたします。なお、ふるさと納税でいただいた寄付金については、ウクライナ支援に活用していただけるよう、関係機関に寄附してまいります。
「コミュニティ活動と市民参画・協働の推進」については、地域住民相互の連帯感と自治意識の高揚を図ることを目的として、令和4年8月に設立した「まちづくり協議会」による「地域減災プロジェクト」事業を継続して支援していくとともに、自治連合会との協働事業である「地域課題を地域で解決するための勉強会」においては、自治会や地域で活動する団体に加え、大学ゼミとの共同研究により、大学生の意見も取り入れながら研究・実践を進めてまいります。また、市民の自由な政策提言が可能な「市民シンクタンク」や、公益的な活動を行う市民活動団体を支援する「みらいステップアップ助成金」事業により、未来につながる様々な施策を「市民と行政の共動」により進め、「市民の幸福実感」のより一層の向上を目指してまいります。
重点テーマ4「価値を高め、次世代に継承する」
4つ目の重点テーマは、「価値を高め、次世代に継承する」であり、本市の歴史や文化芸術、まちの特色を大切にする中での、農業・商業・工業の連携による持続可能な産業振興、自然環境と調和のとれた魅力ある都市づくりなどにより、まちの価値を高め、誇れるまちを次世代に継承する取り組みを進めてまいります。
まず、「文化芸術」については、コロナ禍にあっても刊行を続けてきた「文藝よしかわ」においては、第8号の作品募集に670点の応募があり、審査員からは年々、作品のクオリティが上がっているとの評価をいただいております。
そのような中、これまで小説・随筆部門に4回連続で入選された佐久耕二氏が、令和5年度埼玉文学賞小説部門の最高賞となる正賞に輝きました。これは佐久氏の執筆活動の結実であるとともに、「文藝よしかわ」が持つ役割や可能性が示されたものと考えております。
また、第2回目となる、絵画、書、写真、工芸の4部門を対象として、「吉川市美術展覧会」を開催し、文化芸術の表現の場を設けることで、創作意欲及び創作活動を喚起し、文化芸術の振興を図ってまいります。
「演劇プロジェクト公演」については、令和4年度、5年度に「ばかされ~異聞吉川譚~」を上演してまいりました。小学生から高齢者、障害のある方から外国籍の方など様々な市民キャストがプロの俳優と同じ舞台に立ったその公演の完成度は高く、会場は大きな拍手に包まれました。令和6年度は、郷土よしかわを舞台とした新たなシナリオに挑戦し、多様なキャストとプロの俳優が躍動する舞台を市内外問わず、多くの方に観劇いただけるよう上演いたします。
「文化財」については、先人が積み重ねてきた歴史や育んできた文化を知ることは、郷土愛を育むとともに、未来に向けたまちづくりの大きな力になるとの理念の下、様々な事業を展開してまいりました。令和5年度においては吉川小学校や旭小学校、三輪野江小学校が創立150周年を迎えたことから「小学校のはじまりと校歌」と題した文化財展を市役所にて開催しました。令和6年度は、無形民俗文化財として「市内の祭り」についても調査を進め、文化財展のテーマとして企画してまいります。
吉川市の歴史、食文化の象徴である「なまず」を用いた取り組みについては、令和5年度は、市民や市内事業者、国際友好協会との共動により、「なまずで繋がる世界」をテーマに、本市において「全国なまずサミット」を開催し、世界に向けて「なまずの里よしかわ」を発信することができました。
令和6年度については、新たに水田を活用した「なまず養殖」の補助制度を設け、「吉川産なまず」の市内事業者への流通を高め、市内における「なまず」を食する機会の拡大を図り、農地活用や地産地消、事業者連携を推進してまいります。
また、「なまずの日」には、小学4年生以上の子供達を対象に、「なまず型」の再生紙に花の種が練りこまれた「シードペーパー」を配布します。「なまず型」のシードペーパーから花が育ち、最後は土に還っていく体験を通じて、「自然環境」「郷土愛」「資源循環」について学び、気づきとなるような「なまずの日」としたいと考えております。
引き続き、小中学校における「なまずを用いた学習」や「なまずの日献立」を実施するほか、なまずをキーワードにした各種イベントやものづくり体験などを行い、「なまず文化」や郷土の歴史への理解、郷土愛の醸成に努めてまいります。
「魅力ある農業の振興」については、「下八間堀悪水路の改修」、「しんきぼりの整備」等の農業生産基盤の整備を継続して進めてまいります。また、全国的な課題である農業従事者の減少や高齢化が進む中、今後の地域農業の発展に欠くことができない女性農業者の活躍に着目し、「女性と農業」をテーマとした啓発活動及びイベントを実施し、農業の新たな魅力の発信を行ってまいります。
「農業拠点施設整備」については、旭地区の農業拠点施設である「市民農園」の魅力向上を図るため、「よしかわ若者会議」のメンバーをはじめとする市民や市内事業者等との共動により、市民農園を会場とする「DAYキャンプイベント」を企画・開催し、市民農園はもとより、旭地区全体の愛着度を向上させる機会の提供を行ってまいります。
また、次世代の視点を取り入れた都市近郊農業の確立や、新たな農業拠点づくりなどを目指す「吉川市農業パーク基本構想」の実現に向け、引き続き、地権者との協議を進め、三輪野江地区の新しい農業に繋がる事業内容及び参入事業者の決定に向けて取り組んでまいります。
「賑わいある商業・活力ある工業の振興」については、経済活動の回復の一方で、エネルギー等の価格高騰により事業者の経営に影響が生じていることから、継続した原油等価格高騰対策支援金により事業者を支援したほか、高校生職場見学バスツアーや合同就職面接会、障がい者雇用促進セミナー等を開催し、人材確保や就労機会の創出、雇用安定の支援に努め、また、ふるさと納税を通じて事業者の魅力を発信するなど、「産業振興基本条例」に基づき、「事業者、勤労者、市民、行政の協働による吉川市全体の幸福実感向上を目指した産業振興」を推進してまいりました。
令和6年度についても、「産業フェア」において、次世代を担う子供の職業体験も盛り込み、市内事業者の魅力発信に取り組むほか、「ものづくりアワード」の選定を通じて、市内企業の優れた技術力を市内外に発信するなど、理念に基づく市内産業振興を図ってまいります。
「産業地整備の推進」については、「三輪野江南部地区工業団地開発」において、産業の振興と雇用の創出や、地域の活性化などを図ることを目的として検討を進めており、令和5年度には、地権者の皆さまへ、今後の土地活用に対するご意向を伺ってまいりました。
そうした中で、多くの方が民間開発による事業化を望んでいる状況を確認いたしましたので、今後は地権者の皆さまのそうしたご意向を踏まえ、また地域の方々へも現状をお伝えしながら、関係機関との調整を行ってまいります。
「吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業」については、平成29年の事業開始より、地権者の皆さまのご協力をいただき、宅地造成や都市基盤の整備を順調に進めてまいりました。令和5年度には、都市計画道路等の幹線道路の暫定供用や、1号調整池の治水機能の使用開始に至り、産業ゾーンでは、すでに建物が完成し操業を開始した企業や、建築着工に向けた準備を進めている企業などがあり、まちを構成する機能が動き始めたものと認識しております。
また、吉川美南駅東口駅前の商業業務ゾーン北側街区においては、令和5年8月から事業者募集の手続きを進めてきた結果、令和6年1月には優先交渉権者が決定し、地区の顔となる駅前のイメージが徐々に見えてまいりました。
令和6年度には、引き続き、駅前広場・2号調整池などの施設や宅地の整備などを進めるとともに、近隣公園北側付近の住宅ゾーンの使用収益開始を行い、さらに事業を推進してまいります。
「環境にやさしいまちづくり」については、令和3年4月に5市1町でゼロカーボンシティを共同で宣言して以降、市役所庁舎における再生可能エネルギー100%電力の導入、東埼玉資源環境組合の廃棄物発電の活用など、本市が率先して取り組みを進めてまいりました。
令和6年度においては、新たな電力の調達手法として、小売電気事業者がオークション形式で繰り返し入札を行い、最安値を提示した事業者を落札者とする方式である「リバースオークション」を県内で初めて採用し、市内すべての小中学校の電力について、再生可能エネルギー100%化を実現いたします。
また、地域の民間事業者が再エネ電力のオークションに参加できる仕組みについても、5市1町の共同取組に先駆けて、まず本市が率先して取り組んでまいります。
「資源循環型社会の推進」については、令和5年度からスタートした「第4次一般廃棄物処理基本計画」に基づき、生ごみの減量や、粗大ごみの再使用、雑紙の分別リサイクル、ペットボトルの「ボトルtoボトル」水平リサイクルなどにより、ごみの発生抑制、資源化を図ってまいります。
今後につきましても、市民・事業者と連携し、「経済性」を考慮しながら、「環境負荷の低減」を推進してまいります。
「親水啓発事業」については、新型コロナウイルス感染症の影響から、「川まつり」等の開催を自粛しておりましたが、令和5年度は、3年ぶりに実施することができました。令和6年度も、川に育まれてきた吉川市の歴史や文化に対する理解を深め、河川がもたらす恵みや恐ろしさ、環境配慮意識の醸成など、様々な学びが得られる重要な事業として、引き続き「親水イベント」を開催してまいります。
「環境配慮意識の醸成」については、民間企業の専門知識やノウハウを生かした市内児童生徒への環境学習教室を継続するとともに、ごみの収集運搬や分別を学ぶ「環境センターでの社会科見学」の拡大のほか、夏休みに親子で参加する「親子学習教室」を実施するなど、引き続き、市内の身近な施設で学べる自分ごととしての環境教育に努めてまいります。併せて、環境啓発動画などデジタルコンテンツの充実を図ってまいります。
その他の主要施策
『行財政運営』
「行財政運営」における「組織体制と人事管理」については、令和6年度から都市整備部を都市計画部と都市建設部に分割するなど、組織体制の見直しを行い、意思決定の迅速化や業務の効率化をより推進し、変化する行政需要に的確に対応できるよう努めてまいります。
また、職員に求められる能力や社会情勢を捉え、研修による職員の資質と能力の向上を図りながら、多様な採用試験の実施により、適正な人員、必要な人材を確保してまいります。
「市税等の徴収」については、「現年度課税分の徴収に重点を置く」という方針のもと、納税者に寄り添った納税相談や適切な滞納整理に取り組み、前年を上回る収納率を確保しております。令和6年度においても、引き続き「適正な課税」のもと、「丁寧かつ公平な徴収」の取り組みを進め、市税滞納額の縮減に努めるとともに、給食費や保育料など、税外債権についても、関係各課と横の連携を図りながら、市民負担の公平性の確保に努めてまいります。また、口座振替やコンビニ納付、スマートフォンを使用した納付の普及促進を図り、さらなる納付環境の向上に努めてまいります。
「公有財産管理」については、長期的な財政負担の軽減・平準化を図り、施設の長寿命化を実行するため、「吉川市公共施設長寿命化計画」に基づき、令和5年度は、市民交流センターおあしすの中規模修繕工事を実施しているところでございます。令和6年度については、総合体育館について外壁・内装の改修、照明器具のLED化、アリーナ部分の床改修や空調機設置など、長寿命化改修工事を実施してまいります。また、中曽根小学校体育館については、空調機設置工事に合わせ、長寿命化改修工事に向けて設計を進めてまいります。
「旧庁舎跡地における福祉の拠点整備」については、令和5年度に有識者や福祉関係者、市民などを含めた「吉川市福祉の拠点整備基本計画検討委員会」を設置し、施設に求められる機能などについてのご意見をいただき、併せてサウンディング型市場調査において、民間事業者参入の可能性の確認や意見交換などを経て基本計画案をまとめたところでございます。令和6年度につきましては、民間活用に向けて民間事業者とのさらなる対話や有識者などの意見を踏まえ、実施方針を作成の上、民間事業者の公募に向けた取り組みを進めてまいります。
「吉川美南駅東口駅前の文化芸術関連施設を中心とした公共施設整備」については、吉川美南駅前公共施設整備基本構想・基本計画に基づき、民間活力を最大限に活用し、本市の価値を高め、新たな魅力のある文化芸術活動の拠点を創出するため、土地区画整理事業の進捗状況や商業業務ゾーン北側街区の優先交渉権者が決定したことを踏まえ、社会経済情勢などを見極めながら、最適な事業手法の検討や事業者公募に向けた準備等を進めてまいります。
「デジタル・トランスフォーメーションの推進」については、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化社会を目指す」という理念の下、デジタル技術を活用し、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるため、「吉川市デジタル・トランスフォーメーション推進計画」に基づき、事業推進を継続してまいります。 行政のDX推進といたしましては、「自治体情報システムの標準化」、「職員のデジタル人材育成に関する研修」、及び「キャッシュレス決済の試行」などに取り組むほか、コンビニ交付サービスに対応したマルチコピー機導入による「書かない窓口の推進」や、窓口の混雑状況や待ち人数をスマートフォンで確認できる「待たない窓口の推進」を実施してまいります。
また、地域のDX推進といたしましては、デジタル機器を苦手とする方々へのデジタルデバイド支援として、自治会等に出向いた「高齢者向けスマホ教室」を実施してまいります。
『道路等の整備』
まちづくりの根幹となる「道路整備」のうち、「都市計画道路」については、「越谷吉川線」、「三郷吉川線」、「三郷流山線」は、引き続き、関係機関と連携を図りながら、事業を進めてまいります。また、「越谷総合公園川藤線」は、三郷吉川線までの未整備区間における用地交渉を、引き続き行うとともに、新川橋から東埼玉道路までの区間において測量調査に着手してまいります。
「三郷料金所スマートインターチェンジのフルインター化」についても、引き続き、三郷市と情報共有や調整等の連携を図りながら、令和6年度中に予定されているフルインター化の供用開始に合わせて、周辺道路の改良工事を進めてまいります。
「生活道路」については、路面の補修等の適正な維持管理に取り組むとともに、旭・三輪野江地区においては、これまでに各自治連合会との意見交換を重ねながら、地域の皆さまとの共動による道路整備の仕組みづくりに取り組んでまいりました。
令和6年度は、各自治連合会において道路整備の優先順位などを決定していただき、地域の要望に沿った整備を行ってまいります。
「JR武蔵野線吉川駅北口駅前ロータリー」については、安全性の確保を最優先とし、バリアフリー化などにも対応するため、関係機関や、駅利用者などの多方面からのご意見などを踏まえ、数年間をかけて慎重な検討を重ねたうえで、実施設計を進めてまいりました。
令和6年度は、北口駅前ロータリーを利用する皆さまへの影響をできる限り抑えながら、交通島の撤去などの改修工事に着手してまいります。
『公園等の整備』
「公園等の整備」については、「誰もが楽しみ、憩える公園の整備」を理念に、まず「公園再生プロジェクト」において、開設から30年以上を経過する吉川第一土地区画整理地内の公園を中心として、老朽化した遊具の修繕や、休憩施設の更新を行ってまいりました。一例として、子供達からの人気の高い沼辺公園のターザンロープは、遊具の老朽化や不具合による事故の発生が懸念されたことから、緊急で撤去し、新たなターザンロープの設置をすすめているところでございます。また、「アクアパーク」などは、駐車場を整備する中、民間活力を活用し、老朽化したバスケットボールコートは、アートコートに生まれ変わり、またスケートボード場においては、市内中学生の意見を形にした、初心者の方でも親しみを持って楽しめるスケートボード施設を新たに設置するなど、魅力を高める再生を行ってまいりました。
令和6年度も、引き続き、老朽化した遊具や休憩施設の修繕等を行うとともに、老朽化により撤去を行った遊具の再設置を行うなど、公園利用への要望にも対応しながら、安全安心、魅力の向上に努めてまいります。
さらに、令和5年度から検討を進めてまいりました「インクルーシブ公園の整備」については、市長キャラバンなどにおいて、子供や保護者など市民の皆さまからいただいたご意見を踏まえ、障害の有無や国籍、年齢、性別に関わらず、すべての子供達が分け隔てなく、共に憩い遊ぶことができる公園施設として、吉川美南中央公園内に整備を進めてまいります。
「三輪野江地内の大沢雄一元埼玉県知事の居宅跡地の整備」については、市長キャラバンなどを通じていただいた、子供達をはじめとする市民の皆さまからのご意見と、土地所有者のご意向を踏まえながら、令和6年度においては、整備に必要な敷地の測量や実施設計を行ったうえで、自然を身近に感じながら憩い、遊ぶことのできる場として、また、環境教育の場としての整備を進めてまいります。
「分散型スポーツ施設の整備」については、東埼玉資源環境組合第2最終処分場において、多目的グラウンドやテニスコートの整備に係る具体的な協議を東埼玉資源環境組合との間で進めるとともに、吉川美南駅東口開発地域の1号調整池につきましては、平時において様々なスポーツを楽しめる場として、多目的グラウンド等を整備してまいります。併せて屋外市民プール跡地の活用も検討し、市民が身近な場所で気軽にスポーツに親しめる環境を整えてまいります。
『市街化調整区域での課題に向けて』
本市においては、吉川美南駅東口周辺地区での人口増要因を除くと、人口減少の局面を迎えているところであり、特に、旭・三輪野江地区は、既に人口減少が進行し、他地区と比べ、高齢化も進展しており、今後も、人口は減少傾向で推計されているところでございます。このことから、「旭・三輪野江地区」については、人口減少の緩和を図るとともに、地域コミュニティの維持等への対応が必要となっていることから、庁内横断的な検討を重ねてまいりました。また、地区住民へのアンケートも実施したところでございます。
そうした中、課題解決に向けた取り組みの一つとして、令和6年度は、地域外からの若者世帯の転入のほか、地域居住者の子世代を中心とする3世代家族の同居及び近居に重点を置いた移住に係る支援制度を創設するとともに、市民農園における「DAYキャンプイベント」などの開催により、旭・三輪野江地区の地域の活性化を促進してまいります。
また、市民が「住み続けたい」と思うまちにするための取り組みとして、イベントスタンプラリーを実施するとともに、埼玉県などが共同で運営する「SAITAMA出会いサポートセンター(恋たま)」へ入会し、結婚を望む方を支援してまいります。
今後も、引き続き、定住・移住の促進につながる取り組みについて、地区住民や若者などの声を伺いながら、庁内横断的に検討を進めてまいります。
「公共交通課題」については、本市の公共交通サービスのあるべき姿などを明らかにする「地域公共交通計画」の令和7年度中の策定に向けて、令和5年度に第1回目となる「吉川市地域公共交通協議会」を開催し、公共交通を取り巻く現状や計画作成について、共通認識を図ったところであり、令和6年度から計画作成に着手してまいります。
また、吉川美南駅発着の新規バス路線については、駅東口ときよみ野地区を結ぶ路線は、バス事業者との協議が整い、令和6年4月1日から運行を開始する予定と伺っておりますので、現行の補助制度により、運行を支援してまいります。また、駅西口と道庭・中曽根地区への路線は、運転手確保が課題となっていると伺っており、運転手確保は、公共交通事業全体の喫緊の課題となっていることから、課題解決に向けた取り組みの一つとして、令和6年度は、市内に本社を有する公共交通事業者の従業員の第二種運転免許取得費用に係る補助制度を創設し、運転手確保を支援してまいります。
むすびに
以上が令和6年度の主要施策となりますが、今回の予算編成においても、市政運営における「理念」から、それぞれの事業の「完了後の展開」までを意識した上で編成を行いました。
その市政運営の「理念」とは、(1)「幸福実感があり、持続可能な未来」である「価値ある未来」を目指す。(2)そのためには、市民一人ひとりの主体的な行動も必要であり、「市民と行政の共動によるまちづくり」を力強く進める。(3)「6次総振」や「総合戦略」をはじめ、それぞれの分野・事業に打ち立てた「理念」をしっかりと踏まえる。であり、「完了後の展開」とは、「周知、報告、活用、連携、メンテナンス、ランニングコスト」などを意味し、また、当然、予算編成の基本的姿勢である (1)市税の確保 (2)行財政の適正化 (3)事業効果の精査 (4)世界、国、県の動向注視 (5)民間との連携模索 (6)部や課を越えての連携、などを踏まえ、職員と一丸となって組み上げた施策であります。
それぞれの事業の実施においては、例えば、「吉川美南駅東口開発」や「三輪野江地区開発」などの大きなインフラ整備から、「地域の公園整備」や「生活道路整備」という市民生活に身近な整備まで、また、例えば、「調整区域の人口対策」という大きな視点が必要となる事業から「障害者就労支援」「不登校・ひきこもり支援」などの一人ひとりに寄り添う事業まで、と事業の大小に関わらず、また庁内事業、庁外事業に関わらず、全ての事業において、私を含め、職員一人ひとりが「地域・市民に対して、細やかに気を配り、共動の中で丁寧に事業を進めてゆく」という気持ちを強く持ち、令和6年度も、「価値ある未来」へ繋がる一年とすることをお誓い申し上げ、施政方針とさせていただきます。
令和6年2月26日
吉川市長 中原恵人