2023年度施政方針
先に行われました市長選挙におきまして、これまでの市政運営、そしてこれからの吉川市の「まちづくり」の方向性に対し、多くの市民の皆さまから信任をいただき、引き続き市政運営を担わせていただくことになりました。 3期目においても、市民の皆さまお一人お一人の声に耳を傾け、全ての世代、全ての地域、全ての分野の皆さまと共に、「価値ある未来」を創ってゆくと、決意を新たにしたところであります。今後ともよろしくお願い申し上げます。
それでは、本定例会開会にあたり、令和5年度の市政に対する所信を述べさせていただきます。
はじめに
令和5年度当初予算においては、部署間、職員間の連携をさらに深め、「幸福実感の向上」という吉川市のまちづくりの目標に向けて「理念と計画」をしっかりと明示し、「市民と行政の共動」、「持続可能なまちづくり」の意識を変わらずに持ち、開発・再整備等の大きな事業から、未来につながるチャレンジ事業、そして市民一人ひとりに寄りそう施策までを展開できる、「吉川市の次の10年のスタート」と位置付けられる予算編成を行い、一般会計は254億2,500万円、特別会計総額は173億6,517万4千円、企業会計総額は54億8,423万9千円の予算案となっております。
それでは、「幸せつながる みんなのまち よしかわ」を将来都市像とする「第6次総合振興計画・前期基本計画」の4つの重点テーマに沿って、令和5年度の市政運営、主要施策についてご説明させていただきます。
(命を守る)
重点テーマの1つ目は「命を守る」であり、吉川市において、発生のリスクが高い水害や地震等の大規模災害に備えた都市整備を推進するとともに、自助・共助による減災力を高める取り組みを推進し、災害への対応力強化を図ります。また、感染症による健康被害等に対しても迅速かつ的確な対応が図れる体制の充実を推進してまいります。
まず、「みんなで備える防災・減災の推進」については、令和4年度は、関小学校において「地震」と「水害」の二つの災害をテーマにした「第7回減災プロジェクト」を開催いたしました。この訓練では、自治会の代表者をはじめ、女性や、外国人、中学生などが参加し、避難所の開設や受付訓練のほか、夜間の停電を想定した資機材組み立て訓練や、民間事業者の協力のもと、電気自動車から電源を確保する実践展示等、実際に起こりうる災害を想定した訓練を実施いたしました。 また、これまでの減災プロジェクトを通じて整備を行ってきた「避難所開設運営マニュアル」を、避難所の運営を担う自治会へと水平展開したほか、地域や団体等が主催する訓練や活動に対して、職員を積極的に派遣するなど、地域の減災力の向上に努めてまいりました。
令和5年度においても、避難所運営におけるDX化の検討を進めるとともに、HUG訓練や、「栄小学校」を舞台とした減災プロジェクト等、市民が主体となった、実践的な訓練を継続して実施し、また、市民が自ら災害時に必要な情報を取得できるように、これまで市が整備した減災アプリや登録制メール、防災ツイッター等の情報配信ツールについて、引き続き周知、啓発に努めるとともに、老人福祉センター等において、登録の支援に努めてまいります。 職員においても、図上訓練や避難所開設訓練、各種研修会等を通じて、さらなる知識と対応力の向上を図り、災害時に迅速に対応できる危機管理体制を整えてまいります。 また、災害時に市民の生命や財産を守るためには、「自助」、「共助」に加え「公助」の連携も重要となります。吉川松伏消防組合においては、「全国消防救助技術大会」で入賞するなど、日々の厳しい訓練を通して、隊員の技能や精神力を高め合いながら、昼夜を問わず市民の安全のために尽力しています。市としても、吉川松伏消防組合への積極的な支援をはじめ、「公助」について、警察、自衛隊等の関係機関との連携をさらに深めてまいります。 さらに、指定避難所となる小中学校の体育館並びに総合体育館においては、夏場の熱中症対策や、冬の寒さに対応するため、空調設備の整備を進め、災害時などにおける体育館の機能向上を図ってまいります。
「災害に強い都市の整備」における「治水対策」については、吉川駅北口から県道川藤野田線までを範囲とする第一排水区内の浸水被害の解消を図るため、令和3年度から4年度にかけて実施した流出解析や、共保雨水ポンプ場増強の検証結果に基づき、河川管理者や電力会社等と協議を行い、技術的課題についての精査を進めてまいります。さらに、協議結果を踏まえ、下水道事業計画の変更について、県に対して協議の申入れを行ってまいります。また、老朽化した排水ポンプの更新を行い、引き続き効果的な治水対策に取り組んでまいります。 また、国が整備を進めている江戸川河川防災ステーション内に設置する「水防センター」については、地域住民をはじめ、様々な分野の皆さまから幅広くご意見を伺いながら、必要となる機能や、設備、平時の利活用等の検討を進めるとともに、国の工事進捗に合わせて、必要な工事に着手してまいります。
「水道事業」については、近年、水道施設の老朽化による断水等が全国的にクローズアップされております。吉川市の水道施設も老朽化が進んでおり、「施設更新計画」に基づき、経費削減のため、ダウンサイジング出来る管路を選定し、更新設計・工事に反映することで「持続可能で強靭な信頼される水道」を目指してまいります。令和5年度においては、吉川駅周辺地区での石綿管から災害に強い耐震管への布設替えのインフラ整備、老朽化した南配水場水道施設更新を行うとともに、多くの市民の皆さまに水道事業の現状や災害時対応等を理解していただけるようなイベントを実施してまいります。
「生涯を通じた健康づくり推進」については、引き続き、新型コロナウイルス感染症への対応が重要課題であります。社会経済活動の正常化が進みつつも感染症収束の見通しが立たない中、政府方針により5月には感染症法上の分類が5類相当に引き下げられる予定です。そうした社会状況や感染状況を注視しつつ、令和5年度においても、これまでのコロナ対策の3大理念である、「生命を守る」、「生活を支える」、「地域経済を後押しする」を堅持し、必要な対策を必要な時にスピード感をもって実施してまいります。 「生活習慣病予防」については、引き続き、全国健康保険協会との連携により特定健診とがん検診の同時実施を行うことでがん検診の受診率向上に努めるとともに、本市の特定保健指導実施率が県内トップクラスである強みを活かし、生活習慣の改善による疾病予防や重症化予防について、さらに力を入れて取り組んでまいります。併せて市民の自主的な健康づくりを進めるために「健康・体力づくりポイント制度」や「埼玉県コバトン健康マイレージ」、「ウォーキングリーダー養成」をはじめとするウォーキング事業を継続して行うとともに、吉川市の魅力の周知にもつながる、農産物の生産者や各種工場を巡る「産直ウォーキング」を実施してまいります。
(子どもの笑顔を未来につなぐ)
2つ目の重点テーマは「子どもの笑顔を未来につなぐ」であり、子供を安心して生み育てられるよう、妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援や、配慮が必要な子供やその家庭に対するきめ細かな対応に取り組むとともに、地域全体で子育て家庭を支える意識の醸成や体制づくりを推進します。また、子供達が志を持って社会に羽ばたけるよう、学力・体力の向上を図るとともに、「自制心、やり抜く力、協調性」等の数値や点数では表せない「非認知能力」の向上をめざし、特色ある教育の充実に取り組みます。さらに、様々な困難を抱える義務教育終了後の若者に対する相談、支援体制の構築を図ります。
まず、「妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援」については、すべての妊婦、子育て世帯が安心して出産、子育てができるよう、子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点を中心に妊娠期から子育てまでの切れ目ない支援を実施するとともに、伴走型相談支援の充実に努めてまいります。また、産後の母子に対する保健指導や療養支援、育児のサポートを行う「産後ケア事業」を新たに実施するとともに、令和5年2月から開始した出産・子育て応援給付金の給付を実施してまいります。
「配慮が必要な子どもやその家庭への支援」については、市民シンクタンク委員からの提案である「未来への輪」事業等、ひとり親家庭との交流を通した関わりや「子ども未来応援集会」を通じ、地域や関係機関との連携をより一層深め、支援の輪を広げてまいります。「児童虐待対策」については、引き続き「一人の命も失わせない」との強い思いを持って、特に低年齢の子供を取り巻くリスクの高さに注目し、子供の安全確保を最優先事項と捉え、要保護児童対策地域協議会を軸に、関係機関との連携を強化し、対応してまいります。
「安心して子育てできる環境の充実」については、保育を必要とする全ての子供や家庭が安心して良質な保育を受けられるよう、保育士などへの研修会や情報交換会を充実させるとともに、民間保育施設とも連携を図りながら、さらなる保育の質の向上に取り組んでまいります。また、令和6年度からの開所を目指し、私立幼稚園の認定こども園移行に向けた認可事務や必要な設備改修に係る費用を支援するなど、保育の受け皿確保にも努めてまいります。加えて、兄弟姉妹の同じ保育施設への入所につきましては、以前、利用調整基準指数のあり方を見直し、その改善に取り組んでまいりましたが、引き続きその希望が叶うよう、保護者の皆さまへ丁寧な対応を行ってまいります。
「未来を切り拓く力を培う学校教育の充実」については、吉川市教育大綱「家族を 郷土を愛し 志を立て 凛として生きてゆく」の実現に向け、引き続き「学力・体力・非認知能力の育成」を図ることを理念に、小学校全学年35人学級への段階的移行を小学校5年生まで進めるとともに、「ICT教育の推進」については、小学校において必修化されたプログラミング教育の主な狙いである「プログラミング的思考」を効果的に育むため、プログラミング教材を導入し、子供達の自由な発想を大切にしながら、目的達成に向け筋道を立てて考える力の育成に努めてまいります。また、令和4年度から始めた「心あたたまるはがきコンクール」では、人を思いやり、言葉を大切にした心打たれる作品が多くみられました。令和5年度においても、子供達が豊かな心を育めるよう、引き続き実施してまいります。学校における諸問題の解決に向けては、弁護士から法的かつ中立的な立場で助言をもらう「吉川市スクールロイヤー」を新たに設置するとともに、教職員向けの法的諸問題解決研修等を行い、学校の問題対応力の向上やいじめなどへの迅速かつ効果的な対応を推進してまいります。
「児童館ワンダーランド」については、特徴的な設備を活かした「プラネタリウム投影」や望遠鏡を用いた「天体観望会」のさらなる工夫と内容充実を図ってまいります。加えて、令和4年度に実施した、「小惑星リュウグウのサンプルのレプリカ展示」や「JAXA職員によるオンライン講演会の配信」等の天文科学に関する取り組みを積極的に推進してまいります。また、その他にも、児童館の主な利用者層である小学生を中心とした子供達が、自分達の地元「吉川市」に誇りと愛着を持てるよう、「半成人式」や「しめ縄づくり教室」等、関係機関と連携した事業を展開してまいります。
「様々な困難を抱える義務教育終了後の若者に対する支援」につきましては、「令和4年度 若者支援の在り方検討会議」の皆さまからの提言を受け、支援関係団体と連携した相談会等の実施、SNSを活用した支援情報の周知、「若者支援の在り方検討会議」の継続開催等、具体的な取り組みをスタートさせてまいります。また、経済的な理由から大学受験を躊躇してしまう高校生などを応援するため、大学受験料のサポートを社会福祉協議会とタイアップし実施してまいります。
(誰もが輝くまちをみんなで創る)
3つ目の重点テーマは「誰もが輝くまちをみんなで創る」であり、互いの多様性を認め、それぞれの生き方や価値観を尊重し合い、誰もが自らの力を発揮できる、そうした社会の実現に向けた取り組みを進め、地域でのつながりや支え合いのもと、様々な主体との協働によるまちづくりを推進してまいります。
まず、「共に支え合う地域福祉の推進」については、複雑化・複合化する生活課題への包括的支援を目指し、令和7年度を目途とした「重層的支援体制整備事業」への移行に向け引き続き準備を進める中、令和5年度は、新たにアウトリーチ等を通じた継続的支援事業に着手し、生活課題を抱えながらも支援が届いていない方へ支援を届けるための仕組みを構築してゆき、住み慣れた地域で共に支え合いながら、安心して暮らせる地域共生社会の実現を目指してまいります。
「いきいき暮らせる高齢者福祉の推進」については、介護予防や健康づくりに取り組み、健康寿命の延伸を図るため、脳活ドリルの発行や地域型介護予防教室及び運動教室の開催、民間事業所プールを活用した通所型サービスの実現に取り組むとともに、埼玉県立大学をはじめとする関係機関との連携のもと、筋力量の低下など心身状態を把握するためのフレイルチェックを実施してまいります。併せて老人福祉センターの一部改修を行い、より充実した活動の場の提供に努めます。また、買い物や通院が困難な方に対しての移動支援に取り組む団体への支援を行い、地域における生活支援サービスの充実を図ってまいります。
「互いに尊重し合う障がい福祉の推進」については、「第2期 障がい者の地域での生活を考える検討会議」において、市独自の就労支援策の制度化を成し遂げ、その支援が動き出し成果をあげております。令和5年度においては第3期目の検討会議をスタートさせ、新たなメンバー、新たなテーマも加える中で議論を深めてまいります。また、コミュニケーションの支援の在り方を検討する「情報コミュニケーション支援検討会議」を設置し、支援を必要とする障害者の方々からご意見を伺ってまいります。また、「文化芸術を総合政策に」の理念の下、令和4年度に開催した「障がい者アート展」では、障害がある方から多くのご応募をいただき、大変ご好評をいただきました。今後も引き続き、総合政策の一環として、障害がある方や関係団体と共にアート展等を開催し、芸術活動を通じて、「多様性を認め合い、誰もが活躍できる社会」の構築を目指してまいります。
「平和で互いを認め合う人権尊重の社会づくり」については、「多文化共生の推進」として、翻訳機能を入れたタブレットを総合窓口等に導入したほか、情報の多言語化など、必要な情報提供により、外国人住民の利便性の向上に努めております。引き続き、文化や習慣の違いについて双方向の理解を深め、外国人住民も地域のまちづくりにおいて活躍し、災害時も安全安心な暮らしが可能であるよう、関係団体と協力し、多文化共生のまちづくりを進めてまいります。
「多様性を認め合う社会づくりの推進」については、「よしかわパートナーシップアクション」に基づき、ジェンダー平等の視点を持って「多様性を認め合い、誰もが自分らしく生きることができるまち」を目指し、令和5年度は「女性とスポーツ」をテーマとして啓発に取り組んでまいります。また、性の多様性については「パートナーシップ宣誓制度」により、性的指向または性自認に係る性的少数者の生きづらさや困難さの軽減に取り組んでまいります。
「平和意識の高揚」については、「平和のつどい」において、これまで、市民の合唱団の皆さまによる「平和の唄」、中学生による「吹奏楽部演奏」をはじめ、演劇プロジェクト参加者による「朗読劇」等、新たに文化芸術の要素を取り入れながら、より多くの市民の皆さまと平和への思いを共有できるよう取り組んでまいりました。引き続き、平和都市宣言の理念を踏まえ、「平和のつどい」や「平和バスツアー」等の平和関連事業を実施してまいります。また、「ウクライナ避難民の受け入れ」については、本市は迅速に支援体制を整え、国に対し避難民の受け入れを表明いたしました。ウクライナから避難してきた方々が安心して生活できるよう、引き続き、関係団体と連携して、支援体制を維持してまいります。
「コミュニティ活動と市民参画・協働の推進」については、地域住民相互の連帯感と自治意識の高揚を図ることを目的として、令和4年8月に設立した「まちづくり協議会」による「地域減災プロジェクト」事業を支援していくとともに、自治連合会との協働事業である「地域課題を地域で解決するための勉強会」においては、「自治会課題」、「多文化共生」をテーマに研究・実践を進めてまいります。また、市民の自由な政策提言が可能な「市民シンクタンク」や、公益的な活動を行う市民活動団体を支援する「みらいステップアップ助成金」事業により、未来につながる様々な施策を「市民と行政の共動」により進め、「市民の幸福実感」のより一層の向上を目指してまいります。
(価値を高め、次世代に継承する)
4つ目の重点テーマは、「価値を高め、次世代に継承する」であり、本市の歴史や文化芸術、まちの特色を大切にする中での、農業・商業・工業の連携による持続可能な産業振興、自然環境と調和のとれた魅力ある都市づくりなどにより、まちの価値を高め、誇れるまちを次世代に継承する取り組みを進めてまいります。
「文化芸術」については、令和4年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により中止や延期を余儀なくされていた文化芸術活動を、様々な制限がある中でも感染対策を講じ、可能な限り実施してまいりました。第27回市民文化祭では、3年ぶりとなる活動発表に会場は喜びに包まれ、活気あふれる2日間となりました。また、9月には、演劇プロジェクト「ばかされ~異聞吉川譚~」が公演され、プロと市民キャストが一つとなってクオリティの高い舞台を創り上げました。そして、1月には初の開催となる「吉川市美術展覧会」を吉川市文化連盟と共催し、絵画、書、写真、工芸の4部門の作品全66点を市民交流センターおあしす及び市役所に展示いたしました。特選賞や特別賞といった優秀作品については表彰式も開催され、新たな文化芸術活動の発表・評価の場が誕生しました。令和5年度においては、「生音コンサート」として、梅津碧氏によるソプラノコンサートを中央公民館にて開催していまいります。また、「演劇プロジェクト」についても、「よしかわ」を舞台とした「ばかされ~異聞吉川譚~」を未来を担う世代が観劇できるよう再公演し、プロの俳優や市民キャストの演技に触れる中、自己表現のあり方や自身への気づき、また、郷土愛が育まれる機会となるよう取り組んでまいります。
「文化財」については、令和4年度に「市内に残された水害の記憶」と題した文化財展にて展示した「石仏 大威徳明王」「協同碑」「重修加藤樋之碑」の3基の石碑が、令和4年9月に「自然災害伝承碑」として国土交通省国土地理院の地図に登録・公開されました。令和5年度は、これら「自然災害伝承碑」の碑文と現代語訳等をリーフレットにし、文化財の保護にとどまることなく、「総合政策として文化芸術を活用し、地域課題の解決を図る」取り組みの一環として、地域減災の観点から、水害の歴史と水害を乗り越えてきた先人からの教訓を学び、災害に備える意識の醸成を図ってまいります。
吉川市の歴史、食文化の象徴である「なまず」を用いた取り組みについては、令和4年度は、「なまず」をモチーフとしたオリジナルの郵便ポストを設置するとともに、学校給食においては、「なまずの日献立」に初めて「国産なまず」を提供するなど様々な事業を実施してまいりました。令和5年度は、「なまず」を共通の資源とする全国の自治体、団体、民間事業者等で構成される「なまずサミット」を、地域の活性化や「なまず」関連事業の発展のみならず、社会・経済・環境・災害に係る総合的な取り組みとして、6年ぶりに本市で開催いたします。また、小中学校においても引き続き「なまずの日献立」や「なまずを用いた学習」を実施することで、「なまず」文化や郷土の歴史への理解、郷土愛の醸成、「なまずの里よしかわ」の認知度の向上などに努めてまいります。
令和5年度は、文化芸術基本条例に基づく文化芸術推進基本計画の初年度であり、「文化芸術による幸福実感あふれるまちづくり」を基本理念に、「地域の歴史・文化の継承と活用」、「文化芸術活動の推進」、「文化芸術を活用したまちづくり」の3つを基本目標として施策を展開してまいります。今後も、様々な状況下においても、文化芸術推進の歩みを止めず、文化芸術によるまちづくりを進めてまいります。
「魅力ある農業の振興」については、「下八間堀悪水路の改修」、「しんきぼりの整備」等の農業生産基盤の整備を進めてゆく中、吉川フェアや全国ねぎサミット等、市内外で開催される様々なイベントを通し、吉川産農産物の魅力を広め、消費拡大を図るPR活動を展開するとともに、引き続き、給食での地産地消や農福連携、6次産業化に取り組んでまいります。また、後継者不足や耕作放棄地解消を目的に農地の集積化・集約化を進めるため、農業者と共に、県や農地中間管理機構と連携し、「新たな農業チャレンジ」を検討してまいります。
「農業拠点施設整備」については、次世代の視点を取り入れた都市近郊農業の確立や、新たな農業拠点づくりなどを目指し、令和4年4月に「吉川市農業パーク基本構想」を策定いたしました。現在、コンサルティング業務委託により内容の検討を進めており、今後、地権者との協議を進めながら、事業の詳細な内容及び進出企業の決定に向けて取り組んでまいります。
「賑わいある商業・活力ある工業の振興」については、「産業振興基本条例」及び「吉川市産業振興計画」に基づき、「事業者、勤労者、市民、行政の協働による吉川市全体の幸福実感向上を目指した産業振興」を推進してまいりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、市内経済は大きな影響を受けました。また、現在においても、ウクライナ情勢や為替変動の影響による原油価格や物価の高騰などにより国内経済の状況は不安定であり、市民生活や事業者の経営に大きな影響を及ぼしています。そうした中、刻々と変化する状況や望まれる支援等について、継続的に事業者への傾聴やアンケート調査を丁寧に行い、地域経済の活性化に向け、プレミアム付商品券発行事業、事業者連携発展支援補助金や原油等価格高騰対策支援金の実施等、状況に応じた様々な支援策を展開してまいりました。
令和5年度においても、社会状況、経済状況を注視する中、市内2者以上の事業者による連携補助の制度化をはじめ、販路拡大、ブランド化、事業承継への支援、合同就職面接会や障がい者雇用促進セミナー等の開催による人材確保や就労機会拡大、雇用安定の支援に取り組んでまいります。また、近年、新型コロナウイルス感染症の影響により、縮小、中止としていた「産業フェア」を、令和5年度は、「なまずサミット」と同日開催し、より集客効果を高め、市内外の多くの方々に、市内事業者の優れた技術を発信してまいります。
「産業地整備の推進」においては、「三輪野江南部地区工業団地開発」について、令和4年度に産業の振興と雇用の創出や、地域の活性化などを図ることを目的とした、基本構想案を作成いたしました。そうした中で、地権者や地域の皆さまにもお伝えをしてきたとおり、事業化から事業完了までの確実性が高いと見込まれる、埼玉県企業局と市との共同事業方式を優先して検討していることから、今後も引き続き、県をはじめとする関係機関との調整を進め、同時に、地権者や地域の方々へ丁寧にご説明をさせていただきながら取り組んでまいります。
「吉川美南駅東口周辺地区土地区画整理事業」については、平成29年の事業開始より、地権者の皆さまのご協力をいただき、宅地造成や基盤整備を進めてまいりました。 そうした中、まちの骨格となる幹線道路の形が現れ、産業ゾーンの宅地造成が完成し、企業の建設工事が始まっております。令和5年度には、1号調整池の治水機能の使用を開始し、都市計画道路等の幹線道路も暫定供用開始を行い、工事区域の拡大や駅前広場の整備を進めてまいります。また、新たな市の玄関口となる商業業務ゾーンでは、地域にとって魅力的な企業の誘致に取り組み、さらに事業を推進してまいります。
「環境にやさしいまちづくり」については、「脱炭素社会の構築」において、令和3年4月に2050年の二酸化炭素排出実質ゼロを目指した「ゼロカーボンシティ共同宣言」を5市1町で行い、吉川市においては、令和4年度は市役所庁舎で使用する電力を再生可能エネルギー100%の電力といたしました。また、本市から、東埼玉資源環境組合のごみ処理施設で発電される電力の5市1町での共同利用を提案してまいりましたが、令和5年度においてはその実現により、東埼玉資源環境組合のごみ処理施設から生じる廃棄物発電を活用し、吉川市から排出されたごみ由来の電力を吉川市が率先して導入し、エネルギーの地産地消や、ごみを資源として活用する取り組みをさらに強化してまいります。併せて、令和5年度からスタートする「第4次一般廃棄物処理基本計画」に基づき、引き続きごみの適正処理に向けて取り組むとともに、生ごみの減量化や粗大ごみの再利用などごみの減量に向けた取り組みについて検討してまいります。
「親水啓発事業」については、新型コロナウイルス感染症の影響から、「川まつり」等の開催を自粛しておりましたが、川に育まれてきた吉川市の歴史や文化に対する理解を深め、河川がもたらす恵みや恐ろしさ、環境保全、SDGsへの興味や意識の醸成など、様々な学びが得られる重要な事業であり、令和5年度は可能な形で「親水イベント」を開催してまいります。
「環境配慮意識の醸成」については、これまでに引き続き、民間企業と連携した環境学習教室を実施するとともに、吉川市の自然環境等を活用した環境教育やデジタルコンテンツの作成を進めてまいります。また、環境センターにおける小学生を対象とした、ごみの収集運搬、分別を学ぶ「社会科見学」を実施するなど、令和5年度も様々な主体と連携しながら、いつでも、誰でも、気軽に環境教育に触れ合える機会の提供に努めてまいります。
以上が重点テーマとなります。続いて、その他の主要施策を説明させていただきます。
(その他の主要施策)
「行財政運営」
「行財政運営」においては、まず「人事と組織」については、コロナ禍においても市民の皆さまが安心して過ごせるよう、課を越えた全庁的な連携体制を敷き、職員一丸となって、きめ細かな対応を図ってまいりました。今後も引き続き、変化する行政需要に迅速かつ柔軟に対応していけるよう、民間企業経験者や専門職等、多様な人材を確保するとともに、組織力、プレゼンテーション・ファシリテーション能力、社会対応力の3つを柱とする計画的な研修の実施により、職員の能力向上に取り組みながら、組織体制の充実を図ってまいります。
「市税等の徴収」については、「現年度課税分の徴収に重点を置く」という方針のもと、納税者に寄り添った納税相談や適切な滞納整理に取り組み、全国平均を上回る収納率を確保しております。令和5年度においても、引き続き「適正な課税」のもと、「丁寧かつ公平な徴収」の取り組みを進め、市税滞納額の縮減に努めるとともに、給食費や保育料等の税外債権についても、庁内関係各課との横の連携を図りながら、市民負担の公平性の確保に努めてまいります。また、非対面での納付が可能な口座振替の普及促進、ペイジー口座振替受付サービスの周知、QRコードの利用開始により、さらなる納付環境の向上に努めてまいります。
「公有財産管理」については、「吉川市公共施設長寿命化計画」に基づき令和4年度は、市民交流センターおあしすの改修工事に係る設計を実施しており、令和5年度については、外壁・屋上の防水工事、照明器具のLED化、空調機の入れ替えなど、中規模修繕を実施してまいります。また、総合体育館につきましては、空調設備の整備を含めた長寿命化改修工事に向けて設計を進めてまいります。
「旧庁舎跡地の利活用」については、売却しない方針のもと、「吉川市庁舎跡地利活用検討委員会」における、「地域コミュニティを支える福祉的な機能拠点が必要」、「民間の活用を検討」という方向性を踏まえ、令和4年度には、「吉川市福祉の拠点整備検討委員会」を設置し、施設に求められる機能等について検討を重ね、さらに、国土交通省主催のサウンディング型市場調査において、民間事業者参入の可能性の確認及び関係者、関係団体の皆さまへの意見聴取等を経て基本構想案を固めたところでございます。令和5年度につきましては、事業者へのさらなる意見聴取を実施し、事業の進め方や事業手法の決定など、施設整備に向けた基本計画の策定を進めてまいります。
「吉川美南駅東口駅前の文化芸術関連施設を中心とした公共施設整備」については、吉川美南駅前公共施設整備基本構想・基本計画に基づき、民間活力を最大限に活用し、本市の価値を高め、新たな魅力のある文化芸術活動の拠点を創出するため、土地区画整理事業の進捗状況や商業業務ゾーンへ進出する立地企業、社会経済情勢などを見極めながら、事業手法や事業者公募の時期等について検討してまいります。
「デジタル・トランスフォーメーションの推進」については、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化社会を目指す」という理念のもと、デジタル技術を活用し、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるため、「吉川市デジタル・トランスフォーメーション推進計画」に基づき、自治体情報システムの標準化及び行政手続きのオンライン化に取り組むとともに、キャッシュレス決済の試行導入や高齢者向けスマホ教室を実施してまいります。
「道路等の整備」
都市づくりの根幹である「道路整備」については、「都市計画道路越谷吉川線」、「都市計画道路三郷吉川線」、「都市計画道路三郷流山線」、「三輪野江地区無名橋」において、引き続き、整備が計画的に進捗するよう県をはじめとする関係機関との連携を図る中で、事業を進めるとともに、6市1町の連携のもと、県内東部地域の道路交通について研究してまいります。「三郷料金所スマートインターチェンジのフルインター化」についても、引き続き、三郷市と情報共有や調整等の連携を図りながら、常磐自動車道北側側道の車道拡幅工事を推進し、周辺道路の改良に取り組んでまいります。
また、市民の皆さまにとって身近な生活道路については、路面の補修等の適正な維持管理や通学路の安全対策に取り組む中、特に市街化調整区域においては、自治会と連動するなど、地域要望に応え得る整備に向けた仕組みづくりに取り組んでまいります。
「JR武蔵野線吉川駅北口駅前ロータリー」については、安全性の確保を最優先とし、バリアフリー化などにも対応するため、関係機関との協議をはじめ、多方面からのご意見をいただきながら数年間をかけて慎重な検討を重ねたうえで、実施設計を進めさせていただいております。令和5年度においては、事業の実現に向けて、引き続き、関係機関との協議などを行いながら実施設計を作成し、計画的に事業を進めてまいります。
「公園等の整備」
市民要望も高い「公園等の整備」については、まず「公園再生プロジェクト」において、吉川第一土地区画整理地内の公園を中心として、老朽化した遊具の修繕や、休憩施設の更新を行うとともに、沼辺公園において、多くの利用者に親しまれている大型遊具等の修繕を進めてまいりました。令和5年度は、引き続き、老朽化した遊具の修繕等に努め、公園利用における安全、安心の向上を進めると同時に、障害の有無に関わらず、すべての子供達が分け隔てなく、共に遊ぶことができる「インクルーシブ公園」の整備検討を進めてまいります。また、アクアパークにおいては、スケートボード初心者向けの設備を設置することで、スケートボードを始めたばかりの子供などにも、楽しみやすい施設整備を行うほか、経年劣化が進んでいるバスケットボールコートのリニューアルにも取り組んでまいります。
「三輪野江地内の大沢雄一元埼玉県知事の居宅跡地の整備」については、土地所有者と整備に関する協議を重ねながら、これまで、敷地内に植生している外来種の雑木の撤去等を行い、樹木が生育しやすい環境となるよう整備を進めるとともに、住宅等の解体についてもご協力をいただきました。令和5年度は、市民の皆さまが自然を身近に感じる憩いの場、また、自然とふれあえる環境教育の場の創出を目指し、敷地内におけるゾーニングと、ゾーンごとの整備計画の作成に取り組んでまいります。
また、「公園や駅前等の防犯体制の充実」については、令和4年度においては、防犯カメラの設置にあたり、警察と設置場所の協議などを進め、吉川駅前南北ロータリーに5箇所、吉川美南駅西口ロータリーに3箇所の防犯カメラを設置したほか、社会福祉協議会や民間事業者との連携により、市内の公園11箇所に、順次、防犯カメラを設置しているところでございます。今後については、吉川美南駅東口への設置に向け、土地区画整理事業の進捗を踏まえながら検討してまいります。
「分散型スポーツ施設の整備」については、東埼玉資源環境組合第2最終処分場において、多目的グラウンドやテニスコートの整備についての協議を東埼玉資源環境組合との間で進めるとともに、吉川美南駅東口開発地域の1号調整池につきましては、平時においてスポーツ施設として活用できるよう、多目的グラウンド等の整備を進めてまいります。併せて屋外市民プール跡地の活用も検討し、市民が身近な場所で気軽にスポーツに親しめる環境を整えてまいります。また、令和4年に策定した「吉川市スポーツ推進計画」に基づき、多くの市民が日頃からスポーツに親しめるよう、「する」「みる」「ささえる」といった様々な観点から、ライフステージやライフスタイルに応じたスポーツ事業を展開してまいります。そうした中で、障害の有無や性別、年齢、国籍の違いなどに関わらずスポーツを楽しめる取り組みとして、ボッチャ大会やロービジョンフットサル体験事業、屋内スポーツ大会等を開催するとともに、スポーツを通じて、多様性への理解を深め、共生社会の実現を目指してまいります。
「市街化調整区域での課題に向けて」
「旭地区・三輪野江地区」は、都市近郊でありながらも市民にうるおいと安らぎをもたらす田園環境等を有しておりますが、地域コミュニティの維持等への対応が必要となっております。その対応の一つとして、空家の利活用をはじめ、3世代家族の同居・近居の促進や子育て世代の移住の促進等に関する取り組みについて庁内横断的な検討を進めてまいります。
また、「公共交通課題」については、令和3年度から開催している「公共交通に関する意見交換会」において、地域の皆さまをはじめ、公共交通事業者や専門家の皆さまから意見を伺い、公共交通のあり方について検討を行ってまいりました。そのような中、令和5年度については、市街化調整区域を通る吉川美南駅東口ときよみ野地区を結ぶ新規バス路線の運行について、バス事業者との協議を重ね、運行の目途が立ってきていることから、運行開始後に新規バス路線への補助を行います。また、市街化区域においても、買い物や通院の利便性確保を目的に、道庭・中曽根地区への吉川美南駅発着路線をはじめとしたバス路線の充実に向けて、バス事業者と協議を継続してまいります。さらに、市民の移動に関するニーズ調査の実施と地域公共交通協議会の設置により、市全体としての持続可能な公共交通のあり方ついて継続的に協議を行ってまいります。
むすびに
以上が令和5年度の主要施策となりますが、これらの施策は、これまでの市政運営理念に沿ったものであることは言うまでもありません。
その理念とは「市民と行政の共動」であり、ここまでの吉川市の「まちづくり」が順調に進んできたのも、市民の皆さまお一人お一人が思いを声にし、直接、私達行政に届けてくださり、そして、世代や地域や分野を越え、気持ちを一つにし、力を合わせて行動くださったゆえです。
そうした「市民と行政の共動」が、コロナ禍に立ち向かいながらも「まちづくり」を前進させるための原動力になりました。
そこに深い敬意と感謝を持ち、そして、市長としての責任と、さらなる丁寧さとスピード感をも持って、令和5年度も皆さまと共に、「幸福実感」のある、「持続可能」な、「価値ある未来」を創ってゆきたい、そう思っております。
そしていつの日か、そうした街の様子を見て育った吉川市の子供達が「自分もまちづくりに関わりたい」と思ってくれるように、また、「正しいことを正しく、真っすぐに行う」「市民と行政が力を合わせて、みんなで進める」という「理念のバトン」を子供達に渡せるように、今後も「日々全力投球」「公正無私」「常に現場」を胸に、「理念と計画」を職員と共にしっかりと掲げ、吉川市に関わるすべての方々との「共動」により、吉川市の「まちづくり」を次のステージへと進めてゆくことをお誓い申し上げ、施政方針とさせていただきます。
令和5年2月27日
吉川市長 中原恵人